一仕事終わって、車を停めようとすると頭の上から声が降ってくる。
「尋! こっち!!」
窓を開けて声のする方も見上げると、屋上に人影。
楽しげなその声に引っ張られるように階段を上った。
「見て!」
屋上の重い扉を開けると同時に飛び込んでくる声と――、
「?」
ザア……ッ
急な強い風。
吹き飛ばされそうになる笹飾りと、それを必死に掴む恩を一緒に抱き留めて収まるのを待つ。
「平気?」
「あ、ありがと」
「ドウイタシマシテ」
腕の中で気まずそうに笑う恩の髪を軽く混ぜて、笹飾りを受け取ると給水タンクの脇のハシゴに改めて縛り直した。
「コレでイイ?」
「うん」
「で、コレ、ナニ?」
「今日、七夕でしょ? 夕方、貰ったんだ」
ああ、そういえば。
「願い事、一緒に書こうと思って」
見上げてくる碧い目に何処かが微かに痛む。
「願い事、ね……」
そんなもの有る筈も無く。
「ナニ書こうかな。尋はナニ書く?」
「……」
「んー、やっぱりコレかな」
手にした短冊に迷い無く書かれた願い事。
『ずっと一緒に居られますように』
真っ直ぐ見上げてくるとても綺麗な笑みが、空の星なんかより綺麗で。
その笑顔がずっと続きますように、と願った。
end